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事業再構築補助金、うちは申請できる? 「事業再構築指針」の解説

昨日、事業再構築補助金の「事業再構築指針」が発表されました。
しかしかなり細かい部分まで規定されているため、「うちは事業再構築補助金に申請できるの?」と疑問に思われる方も多いかもしれません。
この記事では、そんな疑問にお応えするため「事業再構築指針」の解説を行い、どのようなケースで申請できてどのようなケースが申請できないかを具体的にお伝えいたします。

 

「事業再構築」に該当するケースは?


まずは「事業再構築」に当てはまるケースを見ていきましょう。
具体的には次の通りです。

①新分野展開(新製品等で新たな市場に進出)

②事業転換(例えば日本料理店⇒焼肉店、金属加工⇒産業用ロボット製造など)

③業種転換(例えば製造業⇒情報通信業、宿泊業⇒賃貸業など)

④業態転換(例えば製造プロセスの変更、オンライン活用サービスなど)

⑤事業再編(例えばM&Aや事業承継などを行い、上記①~④のいずれかに取り組むこと)

パッと見では難しそうに見えますが、実はそうでもありません。
乱暴に言ってしまえば、
「他が取り組んだことがない新しいことをやってくださいね。既にある製品やサービスと似たような事業を行う場合は、ちゃんと優位性を書いてくださいね」
ということです。
つまり、今と違った新しい何かに取り組むのであればもちろんですが、巷にありふれていると考えられる製品・サービス等であっても、事業計画書の書き方次第で採択の可否が決まると考えられます。

 

それでは上記の①~⑤について、それぞれ具体的に見ていきましょう。

 

①「新分野展開」で申請できる要件
「新分野展開」とは、要するに「今の事業を変えずに、新製品等を提供すること」です。
では「今の事業を変えずに」という部分は、どう判断するのでしょうか?
これに関しては、「日本標準産業分類」という表を使います。

 

 

これは各業種ごとに細かく事業内容が定められているもので、今回の事業再構築補助金では基本的にこの「分類」が変わる事業を行う必要があります。
例えば飲食店⇒ネット販売(ECサイト)、ガソリンスタンド⇒自動車販売、といった感じです。
しかし「業種が変わらなくても補助金申請できますよ」というのが、この「新分野展開」です。

 

新分野展開は業種を変えなくても良い(つまり既存事業の延長でOK)のですが、一定以上の新規性(目新しさや新たな価値を有するもの)が他の分類より必要であると考えます。
具体的には、次の3つを全て満たす必要があります。

 

・製品等の新規性要件(次の4つを全て満たす必要があります)
⇒自社で過去に作ったことがないこと、新しい設備でないと作れないこと、ライバルの多くが同じ製品を作っていないこと、今の製品と比べて性能などの違いを示せること(計測できる場合のみ)

 

・市場の新規性要件
⇒新製品等が今ある製品の顧客を奪うものでないこと、新製品等が今ある製品の顧客層と異なること(これは加点要素です)

 

・売上高10%要件
⇒3~5年間の事業計画終了後に、新製品等の売上高が総売上高の10%以上となること(比率が高ければ高いほど加点となります。ただし達成できなかった場合のペナルティがあるかもしれません)

 

つまり「新分野展開」で事業再構築補助金を申請する場合、基本的には製造業が業種を変えないまま新製品を提供することを想定していると考えられますが、例えば次のレンタルオフィス業のようにサービス業でも活用できます。

 

 

②「事業転換」で申請できる要件
次は「事業転換」です。
事業転換とは、いわゆる「業種(製造業や建設業、宿泊・飲食サービス業ななど)」という大枠は変えないものの、「事業(例えば製造業だと金属加工業や半導体製造装置製造業、飲食業だと日本料理店やラーメン店など)」を変えることを指します。
「事業」の枠組みに関しては、「日本標準産業分類」を使用します。

 

今回の事業再構築補助金において、比較的申請が多い要件になると考えられます。
事業転換で申請するには、次の3つを全て満たす必要があります。

 

・製品等の新規性要件
⇒(新分野展開の要件と同じ)

・市場の新規性要件
⇒(新分野展開の要件と同じ)

・売上高構成比要件
⇒3~5年間の事業計画終了後に、新たな事業の売上高構成比が最も大きくなること

 

一番最後の要件のみ新分野展開と異なっており、事業転換のほうが厳しくなっています。
つまり片手間で新事業を行うのではなく、「ちゃんと本腰を入れてやってくださいね」というメッセージが含まれています。
業種ではなく「事業」を変えることが目的ですので、飲食店でいればコンセプトやメニューの違う店舗であっても申請は可能です。
ただし新分野展開と同じく、「新規性」があることが大前提となります。
例えば焼き肉店をやりたいといった場合、その焼き肉店がどのように競合と違うのか、どのような顧客をターゲットとしているのかを説明する必要があります。

 

③「業種転換」で申請できる要件
次は業種転換です。
こちらは「事業転換」と違って「業種」そのものを転換させる場合に申請できる要件です。
つまり製造業からサービス業へ、情報通信業から小売業へ、といった感じです。「業種」の枠組みに関しても、「日本標準産業分類」を使用します。

 

申請できる要件に関しては、「事業転換」と一緒です。
指針にはこのような例が載っています。

 

 

④「業態転換」で申請できる要件
続いて「業態転換」です。
これは数多くのケースで活用できると考えられます。
業態転換とは、簡単に言えば「製品の製造方法(プロセス)や商品・サービスの提供方法(プロセス)」を変更することを指します。
つまり製造工程の変更、または商品・サービスを顧客に届ける方法を変更する、という取り組みが「業態転換」に該当します。

 

業態転換で申請するには、次の3つを全て満たす必要があります。

 

・製造方法等の新規性要件
⇒「新分野展開」の「製品等の新規性要件」とほぼ同じです。
違う部分として、製品・サービスの製造方法や提供方法が新規性を有しているかどうか、となります。

 

・製品の新規性要件(製造方法の変更の場合)または設備撤去等又はデジタル活用要件 (提供方法の変更の場合)
⇒製造方法の変更の場合は、「新分野展開」と同じ製品の新規性要件も必要となります。
商品・サービスの提供方法を変更する場合は、既存設備撤去や既存店舗縮小を行うか、または非対面化、無人化・省人化、自動化、最適化などにデジタル技術を活用すること(単なるタブレッドの使用だけでは不可)となります。

 

・売上高10%要件
⇒新たな製造方法や提供方法などによる売上高が、総売上高の10%以上となる必要があります。
ここは「新分野展開」とほぼ同じです。

 

ちなみに指針の中ではこのような例が載っています。
ヨガ教室の例は、典型的な「オンライン化」の例です。主に対面を要するサービス業では、「業態転換」で申請できる可能性が高そうです。
注目は健康器具の例ですね。この例では「製造プロセスの変更」によって付加価値の高い健康器具を製造するとあり、新製品よりも製造プロセスが重視されています。
つまりAIやIoTといったデジタル技術を活用することで、単に新製品を製造するといった場合よりも採択に有利になることが予想されます。

 

 

⑤「事業再編」で申請できる要件
最後に「事業再編」です。
事業再編では、主に事業承継や事業譲渡、M&Aなどによる再編をもとにした新分野展開(事業転換、業種転換、業態転換)等を行う場合に申請できる要件です。

 

主な要件は次の2つです。

 

・会社法上の組織再編行為等を行うこと

・新分野展開、事業転換、業種転換、業態転換のいずれかを行うこと

 

「事業再編」は、恐らく加点措置が取られるのではないかと思われます。
ですのでもし自社がイチから新事業などを行うのが難しい場合、M&Aや事業譲渡による展開も考えると良いでしょう。

 

事業再構築指針のまとめ


ここまで事業再構築指針の各類型ごとに詳細をお伝えしました。
まとめますと、今回の事業再構築補助金は「新しいことに取り組まないとダメです」というメッセージが一番強いという印象を受けました。

 

しかし、その新しいことは「日本料理店が焼き肉店をやるのは新規性がありますよ」といったように(普通の感覚だと新規性はありませんが)、再構築の必要性と新事業の具体性が認められれば採択につながるものと見られます。

 

ちなみに、焼き肉店の例はこちらです。

 

 

当然ですが、例示されているからといってこれと似た内容が採択されるわけではありません。
現状はどうなのか、なぜ新規で焼き肉店をやるのか、その事業は成功する可能性が高いのか、リスクは何なのか…等々、事業計画書で書き込んでいかなければ採択にはつながりません。
もしご自身で金融機関と共に作成されるのであれば、特に「再構築の必要性」については重点的に書くようにしてみてください。
外部に依頼されるのであれば、実績はもとより「事業をちゃんと理解して事業計画書を作成してくれるか」を念頭に専門家を選ぶと良いでしょう。

 

弊社戦略デザインラボでは、事業再構築補助金の申請サポートを承っております。
ですが第一回目の申請サポートにつきましては、現在ご依頼が殺到しておりご紹介案件のみのご対応とさせていただいております。
第二回目以降につきましては随時ご依頼を承っておりますので、お気軽にお問い合わせフォームよりお問い合わせいただければ幸いです。

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