コラム

管理職を育てるには? 現場スキルとは異なる「マネジメントスキル」の育て方

プレイングマネージャーから脱却するために必要な力とは?

企業において、管理職は組織の成長を支える重要なポジションです。しかし、現場での仕事が得意であるからといって、必ずしも管理職として成功するわけではありません。

多くの企業が抱える課題の一つに、「現場力が高い社員が管理職に昇進しても、マネジメント力が十分に発揮できない」という問題があります。では、管理職として求められる「マネジメント力」とは何なのでしょうか? そして、どのようにしてその力を育てることができるのでしょうか?

本コラムでは、管理職に必要な力を伸ばすための方法を詳しく解説します。

マネージャーの仕事とは

プレイヤーとマネージャーで、大きく異なるのは何でしょうか?

単純に考えると、最も異なるのは「自分で仕事をするか」「組織で仕事を回すか」という部分です。そう考えると、自分で現場仕事にどっぷり浸かっているマネージャーは、マネージャーの仕事を行っていないということになります。

しかし、そういったプレイングマネージャーにも言い分があります。それは「現場が忙しく、任せられる人もいないから自分がプレイヤーにならざるを得ない」という言葉です。これは一見すると納得できそうな理由ですが、実はとんでもない論理であることが分かります。

現場力とマネジメント力の違い

現場力とは、現場での実務能力や問題解決力、専門知識のことを指します。優れた現場力を持つ社員は、自ら手を動かして仕事を進めることが得意で、成果を上げることができます。しかし、管理職にはそれとは異なるスキルセットが求められます。

マネジメント力とは、「組織やチームの状態を良好に保つ力」のことです。具体的には、以下の要素が含まれます。

人間力

部下との信頼関係を築き、相手の意欲を引き出すために必要な「人から尊敬される力」

思考力

物事を俯瞰的に捉え、長期的な視点で課題を解決するために必要な「物事の本質を見極める力」

リーダーシップ

チームをまとめ、目標に向かっていくための推進力として必要な「主体的な行動につなげる力」

 

いかがでしょう? 現場力が高いだけでは、これらの要素を十分に発揮することは難しいですよね。それもそのはず、現場力とマネジメント力は全く異なるものだからです。

この前提を無視して現場力の高い人にマネージャーをやらせると、例えば自動車の運転が上手い人に対して、「自動車の運転が上手いから来月から飛行機を運転してね」と言うようなものです。

管理職が育たない理由

ではなぜ多くの企業では、マネジメント力に課題を抱えたままプレイングマネージャーが仕事に忙殺されているのでしょうか。

管理職が育たない一番の理由は、企業がマネジメント力を育成する仕組みを整えていないことです。多くの企業では、現場で成果を上げた社員をそのまま管理職に昇進させるケースが多いですが、上記の通り現場の仕事と管理職の仕事は本質的に異なります。

現場では、スピード感を持って課題を解決することが求められますが、管理職の仕事は、チーム全体の動きを俯瞰して、長期的な成果を上げるための環境を整えることが中心です。このため、管理職に必要なスキルを計画的に育成しなければ、マネジメント力が高まることはありません。

マネジメント力を高めるための育成方法

では、具体的にどのようにしてマネジメント力を高めることができるのでしょうか? ここでは、3つの要素に分けて考えてみましょう。

1. 人間力を高める

人間力を高めるためには、部下との信頼関係を築くコミュニケーション能力が必要です。具体的には、以下の取り組みが有効です。

  • 信念・価値観の醸成:会社の理念・ビジョンの浸透だけでなく、その人自身がどんな価値観を持っているか、どんな将来を描いてどんな判断基準で物事を判断するか。全社でワークセッションのような形で行うと効果的です。
  • 自己受容の浸透:自身の強みや弱み、思考や行動のクセなどを見える化し、現在の自分を客観視しながら「得意を伸ばして苦手を解消する」ことを行います。これもワークセッションで自身の見える化を行うと、マネジメントに必要な客観的視点を養うことができます。
  • 他者貢献の理解:自分のために行動するのではなく、周りのために行動する。そうすることが必然的に自分のためにもなるということを、対話を通じて理解していくことが重要です。そのための第一歩として、自分の強みや得意を活かして周りにどのような貢献ができるのかを考えてみると良いです。

2. 思考力を高める

思考力を高めるためには、実践方法を理解した上で日々の業務で考えることが大切です。これには、以下の方法が役立ちます。

  • 質問・傾聴:質問と傾聴に難がある人は、総じて思考力の浅い方が多いです。相手の話をしっかりと聞き、その中で本質を捉えながら質問する技術を養うには、「相手に答えを言わず、まず考えてもらう」ことを意識すると効果的です。
  • 論理的思考:論理的思考に関する本は山ほど出ていますが、それにも関わらず日本人は論理的思考が弱いと言われます。これには日本語特有の「結論後回し」が大きく影響していますので、まずは結論から何でも話し、その後に理由や具体的な内容を付け加えると良いでしょう。
  • 仮説思考:仮説思考とは、先にゴールを設定した上でそのゴールに至るまでの道筋を描く思考法です。目標からの逆算とも言われます。仮説思考を養うには、大きなゴールを設定した後に小さなゴールを設定させてみましょう。例えば月間目標が1000万円の売上でであれば、毎週何件訪問し、何件のアポを取って何件商談につなげ、何件の受注があれば良いか、などです。
  • 利益思考:思考力の最後は利益思考です。マネジメントに必要な視点として、「組織の利益につながる動き」ができているかどうかがとても重要です。そのためにまずは「時間」で判断させる習慣をつけると良いでしょう。この仕事はこのぐらいの時間がかかったから、売上にはつながったがコスト面で圧迫され利益が減少した、などです。

3. リーダーシップを高める

リーダーシップを高めるためには、チームの方向性を示し、メンバーを巻き込む力が必要です。具体的には、以下の取り組みが効果的です。

  • 目標設定:リーダーシップで何よりも重要なのが、チームの目標と個人の目標を設定する力です。、全員が同じ方向を向くようにするには、チームと個人の目標がそれぞれ密接に関連し、かつ目標達成した際にチームも個人も大きく成長できることが大事です。
  • 維持管理:維持管理とは、組織の良い状態を維持するために管理を行うことです。通常の管理ではなく、数値目標が達成できなかった際にも前向きな改善策を本人と一緒に検討するなど、より踏み込んだ管理を行うことが必要です。
  • モチベーション:モチベーションは無理に高めるものではなく、高い状態を一定に保つことが大事です。そのために重要なのが、Googleが提唱した「心理的安全性」です。心理的安全性の高い空間を作るためには、共通の価値観や前向きなルールの設定などが求められます。

マネジメント力を高めることで得られる効果

マネジメント力を高めることで、管理職としての能力が劇的に向上するほか、組織にも大きな変化が現れます。具体的には、以下のような効果が期待できます。

  • チームメンバーの成長:マネージャーのマネジメント力が高まることで、チームメンバーは大きく成長します。これは従来の「見て覚えろ」的なマネジメントから、「何をどうすれば自分が良くなるか」を考えさせるマネジメントに転換するためであります。
  • チームの生産性向上:チームメンバーが成長することで、マネージャーの仕事からプレイヤーの仕事が離れていき、マネジメントに集中できることで組織全体の動きがスムーズになります。これにより組織の成果が最大化され、生産性が大きく高まります。
  • 離職率の低下:チーム内で信頼関係が深まることで、メンバーのエンゲージメントが高まり、離職率を低下させることができます。実際にマネージャーのマネジメント力と離職率の相関性は、様々な研究で立証されています。

マネジメント力の向上には継続的な育成が必要

管理職・マネージャーを育てるためには、現場力だけでなく、マネジメント力を高める育成が不可欠です。そしてマネジメント力を高めるには、いわゆる「総合力」と言われる人間力、思考力、リーダーシップという3つの要素をバランスよく伸ばすことが大事です。

しかし日々の業務に追われている現状では、なかなかマネジメント力の育成を行うことができません。そのような場合には、外部の専門家に依頼するのが良いでしょう。

マネジメント力の向上には、継続的な育成体制が必要です。現場力と違って成果が見えにくい能力であるからこそ、常に育成を継続する体制が望まれます。

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