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最低賃金引き上げでどうなる? 優秀な人材を確保するための採用戦略

中小企業診断士の岡本です。

2025年10月3日から、全国で一斉に最低賃金の引き上げがありました。当社が位置する長野県において、従来の998円から1,061円へと、大幅に最低賃金が引き上げられました。

これに伴い、地域中小企業側は対応に苦慮しています。それもそのはず、物価高による原材料高騰の影響も残る中、賃上げにも対応しなければいけないからです。

今回は、最低賃金の引き上げで今後何が起こるか、そして地域の中小企業はどのように対応していけば良いか、をお伝えします。

最低賃金の全国大幅引き上げで起こる変化

まず、最低賃金の大幅引き上げにより起こる変化を考えてみましょう。

長野県では、最新の有効求人倍率が1.24倍となり、昨年から徐々に低下しております。これは最低賃金引き上げ前の8月の数字であることから、おそらく9月と10月はさらに低下することが予想されます。

この要因は2つあります。

1つは、前述の通り物価高などコスト高によるものです。仕事はあるものの、コスト高により儲かる構造が作れない。つまり、ここに人を採用する決断が難しいため、求人に踏み切れないという悩みです。

もう1つは、人材確保を諦める動きです。つまり、仕事が忙しくなっても今の人員体制で回せるよう、自動化・省力化を進める流れです。実は9月ごろから、こういった会社が徐々に増えてきております。

この流れは長野県だけでなく、全国で共通すると考えられます。つまり、今後は有効求人倍率が大きく高まることはなく、横ばいか徐々に下がるのではないかと予想できます。

求職者の質についての検証

しかし、有効求人倍率は1倍を超えている限り、市場は売り手市場ということになります。すなわち、上記のような流れになっても「人手不足」は根本的に解決されず、慢性的に企業を悩ます要因となります。

では、肝心の求職者の質はどうでしょうか。当社は採用支援で多くの実績があり、データも豊富ですので、その辺りのお話をさせていただきます。

現在は求人媒体として様々なサービスがあります。ハローワーク、民間求人媒体(Indeed、engage、ジョブズゴーなど)、人材紹介、転職サービスなど、実に多くのサービスが存在しています。

この中で「求職者の質」だけ考えると、人材紹介が最も高いと考えられます。なぜなら、社会人としてキャリアをしっかり積んできた人が多いからです。しかしその分費用がかかることに加え、自社に適した人材であるかどうかを見極めるのが難しいです。

では民間求人媒体はどうでしょうか。従来は当社でもこれらの媒体を使うことをお勧めしていましたが、最近は質の低下が非常に目立ちます。応募自体は見込めますが、「社会人としてちゃんとした人」が来るかどうかは、本当にタイミング次第となります。

最後にハローワークです。求人ではオールド媒体のように考えている経営者さんもいらっしゃいますが、ハローワークは私どもの会社では非常に信頼性があります。直近の雇用についても、ハローワークからの雇用が3件あります。

良い人材を確保するための採用戦略

では、良い人材を確保するためには、どのような媒体を使ってどのように自社の魅力を打ち出していけば良いでしょうか。求人をかけると1週間で5件以上の応募がある当社では、この点において鉄板の動線設計があります。それは、

求人媒体の選定→求人票のブラッシュアップ→SNSへの誘導→Webサイトへの誘導→応募

という流れです。

まず求人媒体の選定では、当社はハローワークとIndeedをメインとして登録しています。前者は質の確保、後者は量の確保です。直近の採用では、前者から2名応募があって1名採用、後者から5名の応募があって0名の採用、でした。求人媒体は多ければ多いほど露出が増えるためメリットはありますが、その分だけ管理も大変であるため、まずはハローワークとIndeedから始めるのが良いでしょう。

次に求人票のブラッシュアップでは、自社の特異性(他社との違い)を徹底的に訴求しています。例えば当社では、ミッション「世の中にあるギャップを無くそう」、社内の取り組みで最も重視する「学びと成長」、働く環境で他社にはない「親子出社制度」など、自社の特性を打ち出すことで「この会社は他社と違う」「自分もこういう会社で働いてみたい」という求職者のニーズに訴えています。

次にSNSへの誘導です。当社では求人票にURLを記載してInstagramに誘導していますが、そこでは自社で働く人たちの様子や社内での取り組みを多く掲載しています。つまり、言葉だけでは伝えられない「安心感」や「信頼感」をInstagramで訴求しています。実はこのSNSが非常に大事な要素であり、採用でうまくいかない企業の多くがSNSで「安心感」や「信頼感」を訴求できずにいます。

最後にWebサイトへの誘導です。この会社がどういう会社なのか、自分が働くことになったらどのようなキャリアを描けるか、などの疑問に答えるためのコンテンツを用意します。多くの企業さんでは採用ページが該当しますが、会社概要のページでも構いません。要は、会社として何を大事にしており、どのような方向に向かい、そして会社で働く人たちがどうなっていくかがイメージできるようであれば、代表メッセージだけでも十分に伝えられます。

まずは自社の現状を「見える化」しましょう

採用戦略を策定するにあたり、まずはじめに取り組んでいただきたいのは「自社の見える化」です。現状をありのままに見える化することで、理想の姿とのギャップが明確になり、何をどのようにすれば良いかが分かるようになります。

例えば、採用を急いでいるのに応募がない場合、自社の魅力をしっかり伝えきれていないか、または自社の特異性が無いからかもしれません。そうなると先に取り組むべきは、採用施策よりも今自社で働いている従業員に向けた施策かもしれません。

人材確保にあたり、私が一貫してお伝えしているのは「採用だけ見ている会社はうまくいかない」です。採用をうまく進めていくためには、育成や定着の取り組みも重要です。これらが揃ってはじめて自社の特異性が生まれ、他社との違いを打ち出せるようになります。

そのためにも、まずは見える化から取り組んでみてください。そしてできれば、見える化した後に採用戦略だけでなく、自社の経営戦略に紐づいた「人材戦略」を作っていきましょう。それが人材確保を有利にする「人的資本経営」の第一歩となります。

 

当社は人的資本経営のご支援実績が豊富なだけでなく、自社でも人的資本経営に取り組んでいます。人材戦略から採用・育成・定着の施策実行まで一貫してご支援を行い、自社の人材方針である「人的資本開示レポート」の作成も支援しております。

人材で悩んだら、まずはご相談ください。貴社の現状をヒアリングさせていただき、画一的なご提案ではなく個別具体的な「実効性のある」ご提案をさせていただきます。

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